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シドニーの近郊型電車 ラインナップ紹介

(・∀・)

こんにちは。
前回は通勤型の紹介をしたところで力尽きてしまったので、引き続き近郊型(インターシティ)を紹介します。V Setもようやく出てきます。

※路線名(T1、T3など)の詳細はググってください。すぐ出てくると思います。
※セクター(=運用範囲)の凡例
 Sector 1:T4,SCO → イラワラ線が絡む運用
 Sector 2:T2,T3,T5,T6,T7,T8,BMT,CCN(Vのみ) → V Set関係とシティサークル、南方面の路線、諸々の支線が絡む運用
 Sector 3:T1,T9,CCN(Hのみ) → H Set関係と西・北方面に向かう路線が絡む運用

【H Set (Oscar)】
製造年:2006-2012 ビルダー:UGLレール 製造両数:220 現役両数:220
G Setタンガラの通勤型転用、V Setの8両運用増加と1977年製のV Set(DCM,DCTとその派生)の置き換えを目的として製造された車両。Oscar(オスカー)との愛称が付けられています。
M Setの車両構造を踏襲しつつ、バリアフリーのトイレやインターシティ用の背摺りの高い座席の設置、ドアカット機能の付加(シドニー都市圏を出るとホームが短い駅が多い)等長距離運用に適した設備が導入されています。
走り装置はM Setとは異なり、三菱製が再び採用されたため、E233系通勤型にかなりそっくりな加減速音を聴くことができます。ただし、車両の防音性能が高いのと常時空調が作動していることから、綺麗な音は聴けません。

全編成が OD(クハ)-ONL(トイレ付モハ)-ON(モハ)-OD の4両編成を組成し、4両単独(主に日中のCCN各駅停車とSCO)または8両(ラッシュ時中心)で運用されます。
オーバーン車両基地に配置され、セクター1または3の絡む運用(T9には入りません)で見られます。SCOの大体の列車(Wollongong都市圏の近郊列車除く)とCCNの大半の各駅停車はオスカーで運行されるため、狙えばすぐ乗れる系列です。特にホーンズビーからノースショア線(T1系統)を経由するラッシュ時限定のCCNは本系列の限定運用となっています。


【V Set】
V.jpg
大変お待たせいたしました。遂に真打の登場です。
製造年:1970,1977-1989 ビルダー:Comeng(Commonwealth Engineering) 製造両数:246 現役両数:204(1970年製16両は全廃、1977年製は一部廃車)

長距離列車の輸送力増強と居住性向上の使命を果たすべく、政府の命を受け開発された車両。モーター車も含めて2階建てとすること、冷房車とすること等の要求を満たすため、当時既にデビューしていたタロック社の通勤型2階建て付随車の車両構造を参照しデザインされました。
現在もCCNの一部列車(主にシドニー都市圏を出ても快速運転を続ける列車)と、BMTのバサースト行きを除く全列車に充当され、120km/hでかっ飛ばしまくっています。デッキ部を除けば居住性はどの車両よりも群を抜いて快適で、しかも全長24mの長い車体のお陰でダブルデッカーのずんぐり感があまり感じられず、どこを取っても良さみしかない大変素晴らしい車両です。
V Setに乗れば、同じ2階建てでも何故上野東京ラインのグリーン車はあんななのか、本当に不思議に思えてくるはずです。

大別して1970年にデビューした1次車(DCF,DDC,DTF,DTC)、1977年にデビューした2次車(DCMとDCT)、1982年の3/4次車(DIMとDIT)、1986年の4~7次車(DJMとDIT)、1989年の8次車(DKMとDKT)のバリエーションが存在します。

・1次車
試験的要素が強かった同バッチ。当初からCCNとBMTで運用されることが予定されていましたが、BMTでは山間部・トンネル部を走行する故の車両限界の小ささがネックとなり、何とか車両機器を車体に収めるべくUKや日本の技術が多用されました。
そうして落成した16両は、クモハであるDCF8両、クハであるDDC4両、サハであるDTF(1等客室なし)とDTC(1等客室あり)各2両の陣容(→4連×2+2連×4)となり、まずはシドニーからゴスフォード(Gosford)間の運用に充当されることとなりました。
走り装置はUKのAEI製、冷房は東芝製が採用されました。しかし、どちらも故障や能力不足により期待された性能を発揮できず(特に走り装置が深刻だったそうです)、またサハとクハに設置されたパンタグラフからのケーブル経由での給電が不十分であるとの問題が発生。そのため、2次車登場時にDCFは全車が電装解除され、クハサハ含めた15両全て(※)が、多めに製造されたDCM(クモハ)とペアを組むこととなりました。
現存Vとは窓割が異なり、先頭車と中間車で2階建て部分の5連窓の寸法が揃えられています(小窓が無い)。これは車両定員平準化と「見映え」を意識したものだそうです。
2002年に台枠の亀裂が発見され、全車両が引退しています。

※1両は改造前に事故廃車となっています。

・2次車
V2.jpg
本バッチはDCM(クモハ)、DCT(クハ)の2形式のみでの構成。
1次車での反省点を踏まえ、より強力な冷房装置の搭載とクモハへの電源集中がマストの条件とされました。この要求を満たすため、基本デザインはそのままに車体の各種寸法の見直しが図られ、大型の冷房装置とクモハへのパンタ搭載、並びに各種機器をクモハに配置した故の車両定員の削減が図られています。
他方、編成定員は減少させないコンセプトであったため、クモハの定員減をクハの定員増で補う必要があり、1次車で綺麗に揃えられた2階建て部の5連窓は、DCTは小窓あり6連窓、DCMは小窓あり5連窓の歪なレイアウトへ変更されました。
走り装置と冷房は共に三菱電機製を採用。特にモーターなどは、既にS SetとK Setで実績が蓄積されており、恐らくそこも採用の決め手となったのでしょう。

DCTは後に全車に運転台撤去工事が施工されましたが、撤去後に再び運転台が設置される車両が出るなどし、現在でも多くのバリエーションが存在しています。現存DCTのバリエーションは下記の通りです。

DCT:単純な運転台撤去車(仕切りを取っただけ) DCT9031,32,37~40,9042~44 9両
DTD:DCTに再度運転台を設置した車 DTD9033,35,36 3両
DET:DCTを「カンファレンスカー(会議・イベント用)」に改造した車両。9216の1両のみ

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DET9216は上記の通り他の車両に比して遍歴が非常に特殊で、一度イベント車両に改造されたものの現在は一般車両と同等の設備に戻されています。
この車両の特徴は何といっても運転台が「完全に撤去」され、ロングシートが設置されていること。写真でも運転台部分に人がいるのが確認できるかと思います。
他のDCTは運転室こそ撤去されましたが、運転台部分は今も閉ざされたままである一方、9216は運転台も完全に撤去されています。一説によれば、1999年にBMTのグレンブルックトンネル付近で起きた衝突事故で運転台を完全に破壊されたDIM8067(後にDIM8020)の修繕時に、運転台パーツを全て供出したためと言われています。また、ロングシートを設置したVは他に例がなく、これも204両中1両のみの特徴です。
V2編成に組み込まれていますが、当然他の車両と共通で運用されていますので、運用範囲が広く遭遇するのは至難の業です。これに会えたらもう旅行の目的は全て達成されたと考えても良いでしょう。

なお、DCMの一部の車両には車椅子スペースが設置され、DTMへ形式名が変更されています。DCMはDCTに比べると僅かな数しか残っておらず、V21編成のDCM8032とDTM8036の2両しか在籍していません。V21はDCM8032-DCT9032-DTD9036-DTM8036と珍車ばかりが揃う最古参編成で、是非撮影しておきたいところです。

・3・4次車
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DIM(クモハ)とDIT(サハ)で構成。本バッチでは1次車以降製造が無かったサハの製造が再開しています。
2次車と外装の変化はほぼありませんが、2階建て部階段脇の3人&1人席の設置などで座席定員を大幅に増加させ、さらなる収容力の向上が図られました。3次車で確立されたこの座席配置はその後最終増備車まで変更されることはありませんでした。
3次車と4次車の違いは屋根上の冷房の排気グリルの違い程度です。2次車のように改造されまくった車両もいませんが、上の写真のように行先表示器を設置→撤去した跡が残る車両が僅かながら存在します。
DIMは8038~8092の55両が製造されました。

V4.jpg
DITです。DCTで採用された付随車用の窓割が踏襲されています。7次車まで同一仕様でDIT9101~84の84両が製造されました。特にこれといった特徴がある車両は存在しません。
大体の編成は中間にこのサハを組み込んだ4両(クモハサハサハクモハ)組成となっています。

・5~7次車と8次車
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5~7次車はDJM(クモハ)とDITで、8次車はDKM(クモハ)とDKT(サハ)で構成されます。DJMは8093~8138の48両が、DKMとDKTはDKM8139~8145、DKT9185~9191の各6両が製造されました。
当時のタンガラ開発PJで採用が内定していたチョッパ制御をV Setでも取り入れるように、とのNSW州政府の要求に応え、従来の抵抗制御からGTOチョッパ制御へと制御形式が切り替えられました。チョッパ装置も引き続き三菱電機製となったため、東京メトロの各種チョッパ車に非常に類似したノイズ音を聴くことができます。↓

チョッパ制御が導入されたことで、DIMまでのぎくしゃくした加速やデッキでの耐え難い爆音走行音(私にとってはご褒美)とはおさらばとなりました。
なお、5・6次車と7次車では、パンタグラフ脇の排気グリル(冷房用)の大きさが異なる以外に特段大きな差異はありません。

最終バッチの8次車では車体工法が若干見直され、コルゲートでの補強面積の減少やデッキと車内を隔てるドアの引き戸化(従来は開戸)、2人掛け座席から独立した座席への変更(2010年代の更新工事で2人掛けに回帰)、チョッパ装置のグリルの形状変更がなされました。(上写真の真ん中の車両)
コルゲートが明らかに少ないため、遠目で見てもよく見分けが付きます。

この8次車をもってV Setの製造、そしてComeng社のシドニー向け旅客車両の製造は終了しました。


★V Setの走行音を堪能する
Vの魅力は何といってもデカい走行音。特にDCMとDIMは見た目のごつさに反さず、吊りかけモーターのような走行音を発します。特にBMTのパラマッタ~ペンリス間では、他の通勤電車の邪魔にならないよう滅茶苦茶な速度を出してかっ飛ばしていくため、音鉄諸氏には大変好評になること間違いなし。
面白いのは、NSWトレインリンクが話し声の無い静謐な環境を維持すべく導入した「Quiet Carrige」。VもHも先頭車両が指定されていますが、Vのデッキ部の騒音はお察し状態のため、強制的に会話ができない空間が生成され、Quietな空間を結果的に作り出すことができています(笑)。

★V Setを見たい
BMTとCCN沿線ならばどこでも見られますが、シドニー中心部から離れたくなければやはりセントラル駅が一番。朝ラッシュの終わりと夕ラッシュの始まり頃には、ホームのあちこちで増解結作業が行われるので、それを観察するのも良いと思います。
また、フレミントン駅に行けば、ラッシュ前後に大量のV Setが入出庫する光景も見られます。

★V Setの模型を買いたい
私も家にスペースがあれば確実に買っていたのですが、V Setは現地の模型屋さんがHOゲージで商品化しています。資金とスペースに余裕のある方はぜひ購入してみてください。


以上、近郊型車両のご紹介でした。
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