シドニーの通勤型電車 ラインナップ紹介
こんにちは。
いつもシドニーの電車の話をするときに、唐突にS SetやらV Setやら言い出してしまいがちなのですが、そもそも何を言っているのか分からないという状態の方もいらっしゃると思います。
過去にTwitterでは当時の全系列を紹介していますが、あれから1年5か月が経ち新たにB Setも運用入りしましたので、改めてSydney Trainsの現役全車両をご紹介します。
※路線名(T1、T3など)の詳細はググってください。すぐ出てくると思います。
※セクター(=運用範囲)の凡例
Sector 1:T4,SCO → イラワラ線が絡む運用
Sector 2:T2,T3,T5,T6,T7,T8,BMT,CCN(Vのみ) → V Set関係とシティサークル、南方面の路線、諸々の支線が絡む運用
Sector 3:T1,T9,CCN(Hのみ) → H Set関係と西・北方面に向かう路線が絡む運用
★通勤型
【K Set】
シドニーの通勤型初の冷房車として導入されましたが、製造時から冷房完備だったのはほんの一部の車両のみで、他は冷房準備車として落成しています。
2017年のダイヤ改正まではフレミントン車両基地とホーンズビー車両基地に分散配置され、T1での運用が組まれていましたが、今はセクター2のみで運用(T5, T7には入りません)され、平日ラッシュ時にほぼ限定された運用をこなしています。ただしC Setの運用を代替することも度々あるため、平日昼でも乗れないことは無いというのが実態です。
一言で言ってしまえばボロ電車。後述のAやBに比べると本当に車内が薄暗いし快適性に欠けます。が、幾たびの更新工事を通して綺麗な状態が維持されており、ビジュアル的にも「海外の電車感」が凄いので、ぜひ乗車されることを勧奨します。
【C Set】
製造年:1986-1987 ビルダー:ゴニナン社(A Goninan & Co) 製造両数:56 現役両数:56
新機軸モリモリで登場予定だったT Setタンガラの開発が遅れ、「つなぎ」の車両として急遽製造が決定した形式。車体の設計はK Setのものを流用しつつ、タンガラで採用予定だった集団離反式の座席、GTOチョッパ制御装置(三菱電機製)、そして当時どの車両にも搭載が無かったボタン式半自動ドアが装備されるなど、かなり試験的な要素が強い車両でした(半自動装置はその後撤去)。
長年フレミントン車両基地に配置され、セクター2のみで運用(T5, T7には入りません)されています。わずか56両(4連14本)のみの在籍ですが、K Setとは違って平日昼でも一定数が動いており乗車チャンスはある方だと思います。
ちょっとだけスマートな感じを出そうとしたためか、前面にFRP?を使用した謎のデザインが採用されていますが、正直腫れぼったくて好きになれません(笑)。
また、同じ三菱製チョッパ装置を搭載するタンガラと違って、防音がそこまでしっかりしていないので、日本ではメトロ03系を最後に消滅した「GTOチョッパ」の特有の走行音がはっきりと聞き取れます。ぜひ先頭車両に乗車してあの音を楽しんでください。
【T Set (TANGARA)】
↑生粋のT Set
↑G Setから編入された編成 前面下部の意匠が特徴的。
製造年:1988-1995 ビルダー:ゴニナン社(A Goninan & Co) 製造両数:455 現役両数:447(事故廃車8両)
C Setでも採用された各種新機軸と、UKのデザイナー監修の下車内外を1から設計し直した車体を組み合わせて製造された名車。タンガラ(アボリジニの言葉で「進む」という意味)との愛称が付与され、車両側面と各車内の車端部(製造銘板を兼ねる)にTANGARAロゴが配置されています。
これでもか、と言わんばかりにコルゲートを配した旧車にはない大きな窓やモジュール化された各種走り装置、コンピューターによる車両制御、プラグドアの採用等、その後のシドニーの電車の開発に大きな影響を与えた非常にエポックメーキングな車両です。
タンガラには当初から通勤型のT Setとして製造された車両と、インターシティ(長距離運用)用のG Setとして製造された車両が存在します。G Setはトイレ付・転換クロスシート・ボタン式半自動ドア等を装備し、またT Setとは先頭車両に異なるデザインが採用されましたが、後述のH Setの増備でインターシティ運用から外れ、全ての車両がT Set化(通勤型化)されています。そのため、Gのトイレや半自動機能は消滅していますが、インターシティ特有の背摺りの高い座席、先頭車のデザイン、残置された半自動ドア用のボタン等から容易に見分けが付きます。
2度の大規模更新工事(2回目分は現在進行中)を受けており、車内は30年前に製造された車両とは到底思えない程綺麗な状態を保っています。正直横須賀線や高崎線の電車よりも綺麗です。
モートデール車両基地(赤いプレート)とホーンズビー車両基地(黒いプレート)に分散配置され、前者はセクター1、後者はセクター3で広く運用されています。ボンダイビーチに観光に行く際には絶対に見られるはずです。平日休日に関係なくいつでも見られます。
【M Set (Millennium)】
製造年:2002-2005 ビルダー:EDIレール 製造両数:141 現役両数:141
タロック(Tulloch)社製のオーストラリア初・2階建てサハ(S Setに組み込まれていた)の置き換えのために製造されました。タンガラの車両構造をベースにしながらも、黄色い手すりや車内のLED表示機の採用、車内監視カメラの設置、転換クロスシートへの回帰などカスタマーフレンドリーな要素が取り入れられています。
現有車両では唯一日本企業製でない走り装置(アルストム製)を装備しています。
オーバーン車両基地に配属され、セクター2(T7除く)で広く運用されており、中でも休日のT6カーリングフォード線の運用は長年M Setの限定運用となっています。
前面のターゲットプレート(編成番号を示す)は、全車両が以前の配属先であったイブリー車両基地を示す緑色のまま残されています。
【A Set/B Set (Waratah)】
製造年:Aは2010-2014,Bは2017-進行中 ビルダー:Downer EDI/中国中車長春 製造両数:Aは632+4,Bは192 現役両数:Aは624,Bは192 (Aは1編成が航海中に破損+試験車両4両)
シドニーのヌシ。
A Setはミレニアムを更に改良した車両で、車両側面への監視カメラ設置・明るいLED照明・初の8両固定組成など、安全性と環境性能、収容力の向上を図った新機軸が採用されています。8両固定編成ですが、中間の4・5両目は既存の4+4編成とドア位置を合わせるため、他の車両と少々窓のレイアウトが変わっています。
走り装置は日本企業製に回帰し、日立製作所のIGBT-VVVF制御装置と3相交流モーターが採用されました。走り出しの音はE233系やE259系等とそっくり。
A2編成は営業運転前の再整備のため中国へ海上輸送されている最中に、船上で漏れ出した化学薬品に車体が腐食され、一度も営業に供されず廃車となっています。
B SetはA Setの基本設計を踏襲しつつ、初めて車内の表示機にLCDを採用し、また大きく改良されたコンピューター制御ソフトウェアを搭載しています。加えて、前面部のデザインが従来の黄色を脱却したオレンジ主体とされています。2019年2月に追加で17編成の増備が決定され、2020年内には増備車がデビューする予定です。
A/Bはどちらもオーバーン車両基地に配属され共通運用となっており、セクター2/3(T6と平日のT7除く)のどこでも見られます。シドニーでメインどころを旅行するときには絶対にあたる車種で、乗り心地も良く優秀な車両です。
【おまけ:「世界最古の動態保存電車」F SetとS Set】
レッド・ラトラー(Red Ruttler)こと、シドニー初の金属製の電車であったスタンダード・サバーバン型(Standard Suburban Carriage)車両のうち4両は、現在も動態保存車として4両1編成が「F SetのF1編成」として保存されています。ヘリテージエキスポ等のイベント時に度々姿を見せ、多くの参加者の注目の的となっているようです。
全車両が1927年製のため、世界で一番古い「フルで動く」電車とされています。実際走行シーンを見ましたが、並みの現役車両と同じスピードで走ってきて普通に驚きました。
なお、シドニー初の電車であるブラッドフィールド(Bradfield)型は木製でした。
S Setは2019/6で定期運用を離脱し、同7月に引退したシドニー初の量産型2階建て通勤電車(※)。詳細は別記事で後述しますのでここでは省略しますが、これも今や保存車扱いです。なんだか信じられません。
S28編成とS56編成の4両×2が動態保存される予定だそうです。
(※S Setの登場前に、Tulloch社がシドニーの通勤型車両として試作した世界初の2階建て電車が数両存在しましたが、車両不具合が多くすぐに電装解除されており「電動車」として活躍したのは僅かな期間でした。また、その後1970年に登場したV Setは近郊型電車なのでここでは除外します。)
★次はインターシティ(近郊型)の紹介です。いよいよ一押しV Setが出てきます。
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