シドニーへS Setの葬式鉄に行った話(3)―ブルーマウンテンズでV Set俯瞰
翌朝。AM4:50に起床し、バッグに水分と朝食を詰め込んでセントラル駅へ急行。5:20頃の始発から2本目のブルーマウンテンズライン(BMT)・リスゴー(Lithgow)行きに乗り込もうとしたら……
NSWGR 47 Classの4716率いる謎の旧客団臨が1番線に停車していました。4716はLachlan Valley Railway(LVR)所属の動態保存機で、元々1973年にNSW州営鉄道のハンターバレー近辺路線向けに導入されましたが、1990年に早々と引退し、以後動態保存機として現役時よりも長い期間運用されています。
朝早すぎて誰もオタクがおらず、私だけがクソ朝早い時間から一眼を構えている限界オタクみたいになってました。(オーストラリアも鉄オタは結構います。後ほどの記事でよくわかるはずです)
セントラルからみんな大好きV Setに揺られ、ちょうど1時間ぐらいの距離にあるグレンブルック(Glenbrook)駅で下車し、夜も明けきらない町と森の中を40分ほど歩きます。
ここはRoss Lookoutという、送電線工事に伴って出来た道の行き止まりに位置する展望台。グレンブルック川の渓谷に沿って走るMain Western Lineと、その始発駅セントラルが位置するシドニーCBDまでを一望できる素晴らしい場所です。写真右奥に建物が密集して立っている場所がCBDとノースシドニーの高層ビル群です。
なお、平日朝のBMT上りは全て8Vでの運行となり、しかも運転本数が日中の4倍程度となります。
日が出てきました。雲海のようなものが出始め、稜線だけに日が当たり始めとにかく非常に幻想的でした。
基本単独旅行大好きマンな私ですが、この時ばかりは本当に「誰かと来たかったなあ……!」と思いました(笑)。
ここで聞こえてくる音は鳥の鳴き声と滾々とした川の流れ、そしてトンネルへ入る電車の警笛と走行音だけです。日々の過重労働で鬱屈した心をきれいさっぱり洗浄してくれます。
送電線が気になり始めたので、場所を移動します。
うん。良い。大変良い。(語彙力消失)
グレンブルックトンネルからの顔出しと、グレンブルック渓谷を組み合わせて俯瞰できる大変素晴らしい撮影地です。まだ山影が深く露出を上げないと電車が写ってくれませんが、日が回るまで待ちましょう。このグレンブルック渓谷に沿って走る区間は、実は1913年に開通した新線。ブルーマウンテンズの入り口にあたるイミュ―プレーンズ(Emu Plains)からここグレンブルックまでは、勾配が急なこともあって1867年の開通時にスイッチバック式の線路が整備されました。ところが編成の長大化や線路容量の逼迫により、単線スイッチバックだった本区間が露骨にボトルネックとなり、新たに渓谷へ迂回する現ルートが整備されたのです。
旧グレンブルックトンネルの区間を除き、スイッチバック跡は現在は遊歩道になっています。(トンネル区間はキノコ栽培所に転用されています。)
※柵も何もない高い崖の上から撮影する必要があるため、必ず滑りにくい靴で往訪しましょう。落ちたら真下が線路なので本当に死にます。所持品管理も含めてくれぐれも自己責任で。
反対側。文句なし。ヘッドライトがついてないのが残念ですが、下りは1時間1本ぐらいしか来ないので文句は言えません。
バサースト・バレット(Bathurst Bullet)が通過。リスゴーのもっと先のバサーストからシドニーまで直通する1日僅か1本(※)の貴重な列車です。リスゴーまでしか電化されていないため、この列車はディーゼルカーであるエンデバー型(Endeavour Set)2両の固定運用で、BMT唯一のディーゼルカーによる定期列車になっています。
※ちょうど今月から1日2本体制となり、シドニーでも撮影しやすい列車となります。(リンク:https://transportnsw.info/news/2019/second-bathurst-bullet-service-added)
ラッシュも終わりとなり、上りが30分に1本となると4両運転が始まります。
それにしてもV Setのモーター音は本当に大きく、山の中にいつまでも響き渡っています。車内では防音のおかげかそこまで走行音は聞こえてきませんが、外とデッキ部ではとにかく主張してきます(笑)。
やっと渓谷に日が当たるようになり、奥のブルーマウンテンズの山々も綺麗に見渡せるようになりました。これ以上遅くなると電車が1時間に1本となってしまうので、これにて撤収します。
なお、渓谷の池のようなものは天然の「プール」。勿論水源は川の水です。
撮影地からグレンブルック駅まで戻る途中で、こんな平和な遊具を見つけました。
この近辺は歴史的な建築物や遊歩道が多く、また駅周辺には小さいが活気のある商店街があるなど、ミニ軽井沢っぽい雰囲気(しかも軽井沢より俗っぽくない)が感じられます。鉄オタ目的でなくとも普通に息抜き・観光しに来る価値がある場所なのは間違いないので、今度は本数は少ないけれど日中にゆっくり撮影して散策したいなあ。
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