シドニーへS Setの葬式鉄に行った話(2)―シドニーメトロに乗る
インディアン・パシフィックを撮影した後は、ブラックタウン駅とスコフィールズ駅を経由してタラウォン駅へ向かいます。
ブラックタウンはシドニー屈指の治安の悪い街で、改札を出ると普通の人に交じって明らかにヤバそうな人が歩いている光景が当たり前のように見られます。このような駅では夕方になると警官が監視を始め、怪しい通行人を引き留めて犯罪の未然防止に努めています。シドニー西部(Western Suburb)は全体的に所得の低い住民が多いので、必然的に公共交通への依存度が高まり、時には車内トラブルを起こす事態もあるようです。(私は幸い巻き込まれたことはありませんが、目撃したことはあります)
スコフィールズはブラックタウンからもっと北へ入ったところの田舎町。10年程前に新築移転した駅の周辺には、国民的スーパーマーケット・Woolworths(ウールワース)と申し訳程度のバス停しかありません。ただ、駅から少し離れると広大な新興住宅地が広がり、開発の余地が沢山あることを感じさせてくれます。
この住宅地には各区画に同じ形の家がすらりと並んでおり、日本の郊外住宅地と全く変わらない風景が見られます。キャプションをつけなければ完全に埼玉県と間違えそうな街並みでした。
シドニーメトロは今年の5月に開業したばかりの鉄道路線で、高頻度で無人運転を行うのが特徴です。全駅に自動改札機とホームドア(背丈がかなり高い)が設置され乗客の安全確保が図られているほか、全線が完全な立体構造となっています。
メトロの車両。フランスのアルストム製(工場はインド)で6両3ドア車ですが、特筆すべきなのはシドニー名物だったダブルデッカー構造から決別したこと。通常の1階建て車両での運行とする代わりに、ラッシュ時は最小4分間隔での運転を行い、短編成高頻度運行を実現しています。
ちなみに、シドニーには3分間隔でタブルデッカー8両編成が満員の乗客を運ぶ、ノースショア線という恐ろしい路線もありますが、メトロが全線開業するとノースショア線のバイパス的役割を一部区間で果たすこととなり、混雑の大幅な緩和に貢献するとされています。
車内。青色の椅子が優先席です。車椅子スペースを兼ねる座席は跳ね上げ式となっています。
防犯のためか車両間の扉がありません。無人運転では万が一の場合に人間が対応できないため、このような構造として抑止力としているのでしょうか? なお、メトロ以外の一般の電車と同じく、当然車内にはCCTVが設置されています。
ドア上には初めてまともな内容を案内するLCDが設置されました。Sydney TraiinsのB SetにもLCDは設置されましたが、あれは従来のLEDパネルと同じ内容を案内しているだけであまり示唆には富んでいません。
無人運転で運転席が無いため、シドニーの電車で初めてクリアな前面展望が楽しめる車両となりました。末端部のヴェラビスタ(Vella Bista)駅からタラウォン駅までは、周りに高い建物が殆どない高架部を走行し、非常に良い眺望が楽しめます。
ヴェラビスタからはチャッツウッドまで一部を除いて地下を走行します。スムーズな乗り心地で騒音も小さいため、減速し始めて初めて駅が近いことを知るといった感覚を味わうことができます。
途中の地下駅は、以前ダブルデッカー車が走行していたチャッツウッド~エピング(Epping)間と、新規開業したチェリーブルック(Cherrybrook)~ノーウェスト(Norwest)間でそれぞれ別の統一されたデザインが採用されています。その内ノーウェスト駅でだけオレンジ色の照明が使用され、異様な雰囲気を演出していました。
そのノーウェスト駅で壊れたホームドアを発見。シドニーメトロではあちこちでホームドア故障が起こっていて、記念すべき開業日にもドア故障で大幅な遅延を起こしていたりします。今回の乗車時も他の駅で黄色い柵が置かれたドアを複数目撃しました。副都心線みたいです。
こちらはダブルデッカー車が走行していた路線(Epping-Chatswood Rail Link,ECRL)を転用した区間。同じマッコーリー大学(Macquarie University)駅で撮影してみました。大きく変化したのはホームドアぐらいで、後は従前の設備を活用しています。
今回乗車した感じでは、最も利用客が多かったのがこの転用区間でした。一応開業から10年ぐらいは経過しているので、新規開業区間に比べれば当然といえばまあ当然です。
現時点のメトロの始発駅・チャッツウッドに到着。かつてECRL用のホームだった2/3番線は、現在メトロ用となりホームドアが設置されています。ホームドアの手前からメトロの車両を撮るためには、思いっきり手を伸ばさないと柵が大きく映り込んでしまいます。
対面でノースショア線へ乗り換えられる便利さ故、地下深くから地上まで出なければならないエピングでの乗り換えよりもこちらが賑わっていました。ただ、これも数年後にシドニーCBDまでの延伸が完了すれば、大量の乗降が見られる光景は過去帳入りとなってしまうでしょう。
次回はいよいよインターシティのガチ撮り鉄編です。
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